Service 06

リフォーム

物件の状況と目的に応じた費用対効果の高いリフォームを

 歴史ある寺院や神社には、築年が数百年を超える建物が少なくありません。木造建築は、適切な修繕を行えば半永久的に使用できるのです。
 いまや住宅についても「100年時代」と言われます。維持のための修繕ばかりでなく、気分転換のための軽いリフォーム、ライフスタイルの変化に応じたリノベーションなどに取り組むことで、生活品質の重要な要素を担う「住環境」を維持・向上させることができるでしょう。
 また、売却や賃貸の対象となる不動産物件には、なんらかの修繕が必要なことが多く、それらを手当てしてから、そうでなくとも多少のお化粧直しをしてから出すことがより高値での売却・賃貸につながるですが、そこまで手が回らないお客様が多く、またリフォーム業者や工務店は、実需向けのグレードの高いリフォームを提案する傾向があるため、なかなか売却や賃貸を前提とした状況には合わないことが多いのです。

 少し角度を変えて言うと、(不動産業界もまあいろいろありますが、その姉妹業界ともいえる)建築・リフォーム業界にも、様々なリスクや落とし穴があります。不動産と向き合う上で、建物の修繕・リフォームは避けて通ることのできないテーマです。新築であっても、何年もまったく問題が出ないということは稀ですし、十年~二十年単位でより大規模な修繕が必要になってきます。
 このページでは、不動産を所有、売却、賃貸するにあたって、知っておいていただきたいリフォームの基礎知識をお伝えします。(以下の文中の、青字は知っておきたいリフォーム用語、赤字は留意していただきたいリスクです)

リフォームの実態を理解しよう①・・・分譲グレードと賃貸グレード

 冒頭でぼんやりと示したのですが、実はリフォームには大きく、分譲グレード賃貸グレードがあります。分譲グレードというのは、分譲マンションや新築の戸建に使用されるような設備や建材を用いたリフォームで、例えば、キッチンの流し台であれば、安くても20~30万、高ければ50万~という価格帯のものを用います。
 一方で、アパートに使われているような、賃貸グレードの流し台は、サイズも小さいですが、本体価格が3~4万円から、据え付け費用を入れても、5~7万円から設置できるのです。普通の戸建ての所有者が、リフォーム業者や工務店に問い合わせると、当然ながら分譲グレートの設備を提案されます。暮らしをより快適にするためにマイホームをリフォームするような場合には、分譲グレードでもちろん良いのですが、賃貸に出すことを想定したリフォームや、売却前のお化粧直しが目的であれば、戸建てであっても、賃貸グレードでないと間尺に合いません。
 アパートから賃貸の戸建てに引っ越したい、と考えて内見に来た方が、「流し台のグレードがアパートと同じだから借りません」、とは言わないのです。右の写真と、下のAfterの写真は、いずれも戸建てに賃貸グレードの流し台を設置した例ですが、あまり違和感はないのではないでしょうか。
before after

リフォームの実態を理解しよう②・・・リフォームの原価

 リフォームにかかる原価は、材料費と職人さんたちの工賃(合わせて「材工費」)で、大規模なリフォームだと重機や足場の費用などが加わります。

リフォームの見積・請求における原価率ですが、普通にリフォーム会社に見積りを取った場合、ざっくり5割程度でしょう。粗利が5割と言うと、儲かっているように思えるかもしれませんが、会社の一般管理費用・営業費用・財務費用を引いた残りが利益ですから、いい線なのです。

しかし、もっと利益を乗せたリフォームも多いのが実態です。例えば、流し台が分譲グレードであっても賃貸グレードであっても据え付けの手間はあまり変わらないはずですが、分譲グレードだとそのあたりもなんとなくグレードアップしてしまう傾向にあります(お高いレストランだとビールも高い、みたいな感じです)

大手のリフォーム会社であれば、(広告宣伝費などに経費もかけているでしょうけれども)、実際の施工は外注することが多く、元請けの利益と下請けの利益の両方が必要になるので、原価率はさらに下がります。

そして、もっとも無駄な利益が乗りやすいのが、(普通の)不動産会社・不動産物件管理会社に依頼する場合です。不動産会社がリフォーム部門を自社内に持っていることはほとんどなく、リフォーム会社に外注し、リフォーム会社がさらに下請けに出すことが多く、その結果、ひどい場合には平均的なリフォーム費用の2~3倍の請求になっているケースがあります。


 なお、当社では、常に直接の施工会社からの請求書をお客様に共有し、その15%(税別)の手配料のみいただく明朗会計で、お客様のリフォームをサポートします。施工会社からリベートなどももちろんもらいません。

費用対効果の高いリフォームをしよう①・・・分離発注

リフォーム費用を抑えるためのポイントの一つが見えてきたのではないでしょうか。広告宣伝でみかけるような大手のリフォーム会社や、(外注するのが分かり切っている)不動産会社に依頼するのは避けて、なるべく現場に近いところ、できれば、職人さんが自営業でやっているようなところに頼むのがベストです。(食材で言えば産地直送です)

 そうすると、クロスやクッションフロアは内装職人、塗装は塗装職人、躯体に関わる場合には大工さん、水回り設備は水道職人、電気関係は電気工事士、他にも板金職人、左官屋さん、サッシ屋さん、美装屋さん、解体業者、産廃業者などなど、リフォームに必要なさまざまな施工を分離発注することになり、手間はかかります。また、大規模なリフォームだと、施工の順序の調整なども必要になるので、総合的なリフォームを提供している1社に任せた方がいい場合もあります。

 逆に言えば、1種類の専門しか必要ないリフォームを、総合的なリフォーム会社に頼むのはナンセンスです(ステーキハウスに入って、フライドポテトだけを頼むようなものです)。

 分野別のリフォーム業者・職人を探すことのできるインターネットサイトもいくつかあり、大手からの下請け仕事のスキマ時間を活用していたり、または大手から独立した若手の職人などが仕事を探していたりしますので、そういうサイトを活用するのも一案です。

 職人さんにとっても、依頼者(建築・リフォーム業界では、施主と言います)の顔が見えていて、いい仕事をすれば喜んでもらえる、という状況はむしろやり甲斐につながると言えます。

費用対効果の高いリフォームをしよう②・・・施主支給

リフォーム業者からの見積書で、例えば、「流し台交換一式」としか書かれていないのは、良くない例です。それでは良い例はどうかといえば、(新しく設置する)「流し台:メーカー・型番」、「設置費用」、「旧品処分費用」、という具合にきちんと分かれていることです。

 そもそも、主要な設備のメーカー・型番が記載されていなければ、記載してもらうところからスタートです。メーカー・型番が分かったら、インターネットで検索してみましょう。今どき、特に賃貸グレードの設備は、業者の仕入値とそれほど変わらない金額で、大手ショッピングサイトで売られていることが多いです。

 見積書上の設備の金額が、ネット上で検索できる価格と同程度かまたは安ければ、その業者は良心的です。ですが、より高くて、その差が大きい場合には、ネット上の価格を提示して値引き交渉をするか、または施主支給で、と依頼しましょう。施主支給を嫌がる業者は、パスしていいです。

 ただし、施主支給する場合に、流し台でいえばシンク・排水口の位置、水栓の場合は湯水配管の間隔や寒冷地仕様など、その設備を理解しないと使えない物を発注してしまうこともあるので、製品仕様を業者さんに確認してもらってから発注しましょう。

 

流し台の交換の見積りに戻って、設置費用は要するに工賃ですから、ざっくり1日みれば十分です(実際には半日もかからないかもしれませんが、水道職人をこのためだけに来てもらうとすれば、およそ1日つぶれます)。旧品処分費は、いわゆる産業廃棄物処理費用で、最近はかなり高くなっていると言われますが、それでも家電リサイクル券くらいのイメージでいいでしょう。

 このように、リフォームのおおよその原価を把握した上で、分離発注と施主支給を適宜駆使すると、誰でもかなり原価に近いところでリフォームを実施することができます。

費用対効果の高いリフォームをしよう③・・・その見積書ほんとうに必要ですか?

 築二十数年のマンションで、ユニットバスがちょっと古びてきたので、リフォーム業者に問い合わせたら、「もう交換の時期ですね」と言われ、100万円前後の見積りを提示され、念のため他にも2社来てもらったが、どちらも同様の見解で同じような金額の見積書が出された、というケースがあり、当社が「ダメ元で、プロのハウスクリーニングを入れてみましょう」とアドバイスしたら、「十分満足するほどキレイになった」、というオチでした。

 (法定耐用年数が22年ということになっている木造住宅もそうですが)、日本の大手メーカーが製造したユニットバスが、個別の部品や部分はともかく、まるごと二十数年で使えなくなるなどということは無いです。

 他にも、屋根の点検を持ち掛け、(点検に際して壊しておいて)問題が見つかったと言い、損害保険が下りますから、と言って修理を受注する、といった悪質な業者について、聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。

 業者から、修繕・リフォームが必要です、と言われた際には、見積書の中身を吟味する前に、そもそも本当にその修繕・リフォームが必要なのか、よく確認・検討することが望まれます。

 

 また、上の例で、相見積をとれば合理的な値段が出るとは限らない、ということをご理解いただけたかと思います。リフォームの原価を把握できるようになったら、1社からの見積りで十分です。それで、原価よりもかなり高い箇所についての値引交渉が進まないようなら、次の業者に見積りを依頼すればいいのです。この方が効率的ですし、業者も、相見積だとあまり真剣に対応する気が起きない、といったデメリットもあるからです。

費用対効果の高いリフォームをしよう④・・・DIYグレード

リフォームには実は、第3のグレードがあります。DIY(Do It Yourself:自分でやろう)グレードです。自宅においても、網戸や障子の張替えであれば自分でやる、という方も少なくないのではないでしょうか。残置物も、業者が処理すると産業廃棄物ですが、住民として自治体のクリーンセンターに持ち込めば、はるかに安く処理してもらえます。

 より難易度の高い、普通なら職人に頼むような施工も、今どきYouTubeを探せば、プロの職人さんが、丁寧に施工方法や必要材料・工具について説明してくれている動画がたくさん出てきます。

 ただし、本当にDIYでいろいろやるのが好き、というのでないかぎり、ご自身でのDIYはお勧めしません。まず第一に、効率が悪いのです。DIYでは工賃は不要になりますが、プロよりも早く作業できる素人はいません。その時間で、ご自身がプロである仕事に取り組み、施工は職人に頼んだ方が、損得勘定から言えば合理的なのです。

第二に、ほとんどのDIYでは多かれ少なかれ、ケガの危険を伴います。高所から落ちて骨折などしたらシャレになりません。どう転んでも、労災はおりませんし。

 

 ですが、ご自身でDIYをせずに、DIYグレードのリフォームをすることも可能です。

 例えば、内装がほとんどの表層リフォームで、少し塗装した方が良い箇所があったとします。クロス職人さんに、「ここの塗装も、やってくれない?」と聞いてみると、自身がプロではない領域なので、オマケ的に安くやってくれることが少なくありません。むこうにしても、仕事の幅が広がるので、一石二鳥です。職人の中にも、大工だけれども電気工事士の資格を持ち、水道工事もできるような、一人親方がいます。

 インターネットのお手伝い募集を活用したり、便利屋さんやシルバー人材センターに依頼するのも、品質は(現役の)プロには至らないかもしれないが、より安くリフォームを行う方法です。 

誰のためのリフォームか

 ご自宅のためのリフォームであれば、費用対効果は、自分自身(またはご夫妻(または子供たちも?))で決めることができます。こだわりの高級輸入家具を主役に、斬新なインテリアをコーディネートしてもよし。庭石と植栽で、和風な庭づくりもよし。イケヤの照明とラグで、一万円未満のプチリフォームなんてのもいいでしょう。

「人は食べたものでできている」、などといいますが、ここは衣食住に拡張して、そこで過ごす時間の積み重ねが人生ですから、ご自身の納得できる空間に住むことに、それなりにはこだわりたいものです。必ずしも大きな費用を掛けなくても、センスのよい部屋を作ることは可能です。ここまでの内容を踏まえて、お金がかかるから、と諦めていたリフォームにも、案外取り組めるかも、と思っていただけたのではないでしょうか。

 

一方で、賃貸する場合、入居希望者がどのような設備や内装を求めるかは、予想するしかありません。その際に重要なのは、まずは一般的な傾向を踏まえることです。

汚い箇所、特に水回りに清潔感が無いとパスされやすいとか、古臭い設備(汲み取り式便所、バランス釜、屋外洗濯機置き場)は嫌がられる、といったあたりは、売買と共通ですし、普通の感覚で理解できます。

ですが、売買と賃貸でニーズが異なる部分も少なくありません。例えば、美しい植栽・庭は、家を購入したい人には喜ばれますが、賃借したい人にとっては興味がないどころか、むしろ手間がかかりそうで、嫌がられる傾向にあります。「もう1台駐車できたら借りるのに」、と言われて庭を泣く泣く駐車スペースに変更したりします。

一方で、インテリアについては、ちょっと派手(鮮やかなアクセントクロス、奇抜な襖紙など)な方がむしろ良い傾向にあります。自宅としての購入を検討している人であれば眉をひそめそうですが、賃貸の場合には、「ずっと住むわけでもないし、面白いからちょっと借りてみようかな」と思ってもらえることが多いのです。

 さらには、その物件の特性を生かして、オンリーワン、とまではいかなくともアピールポイントを作ることができれば大きな強みになります。防音仕様の部屋がどうしても必要な音大生もいれば、山奥の一軒家を探している養蜂家もいます。

 人の生き方の数だけリフォームのニーズがあると言ってもいいでしょう。リフォームにより、その不動産物件のポテンシャルを最大限引き出してあげたいものです。
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