不動産投資
不動産投資のススメ
資産家は、現金と株と不動産の3つに分けて資産を持つと言われます。不動産は、安定した賃料収入が見込め、若くから着実に取り組めば、運や才能なしで大金持ちになることが可能です(本当です)。働き盛りからでも、将来年金だけに頼らない充足した引退生活を送ることができるでしょう。不動産投資は相続税対策の代表選手であり、将来の賃料収入という形で資産価値を次の世代に引き継ぐことができます。
つまり、どの年代であっても必修と言えるマネーリテラシーであるにも関わらず、日本では株よりもはるかに理解されておらず、かぼちゃの馬車事件のように、基本的な知識があれば回避できるような落とし穴にはまって苦い思いをする人が後を絶たず、不動産投資がよりハードルの高いものになってしまっています。
このページでは、不動産投資のポイントとリスクのエッセンスをお伝えします。しっかり読んでいただければ、危ない不動産投資を避け、豊かな人生を実現するための大きなヒントとなるはずです。(なお、以下の文中の、青字は知っておきたい不動産用語、赤字は留意していただきたい不動産投資リスクです)
不動産投資で目指すべきはストック利益
不動産投資で得ることを目指すのは、ストック利益を生む不動産物件であり、そこから、基本的に何もしなくても毎月着実に賃料が入ってくること、すなわち不労所得があることが、お金ばかりでなく、時間と心の豊かさの源泉になるのです。
ちなみに、株でも高配当銘柄に投資して価格の上下は気にしない、というストック利益的な投資法があります。
不動産投資の醍醐味はレバレッジ
理論的には(あくまで理論的には)、最初に資金を用意して、その投入金額よりも担保価値の高い不動産物件を買い、それを担保に借入(バックファイナンス)をする、ということを繰り返せば、わらしべ長者のように、無限に資産と賃料収入を拡大することができます。
トランプ元大統領が何度も破産しながら、不動産王に返り咲くことができたのは、再チャレンジを可能にする米国の起業環境もさることながら、不動産だけが可能な大きなレバレッジによると言っても過言ではないでしょう。
しかし、レバレッジを大きくかければかけるほど、当然ですが、計算が狂えば破綻しやすいという大きなリスクを抱えるということになります。
表面利回りを見てはいけない①・・・想定入居率×想定賃料は必ず自分で計算する
まず、不動産投資物件の表面利回りは、絶対に実現しない架空の数字だということを肝に銘じてください。なぜなら、表面利回りは満室を前提に計算しますが、室数の多いマンションやアパートを満室で経営し続けることなど不可能だからです。
実際にどの程度の入居率(満室-空室率)で運営できるか、甘すぎず辛すぎず、地域の空室率を念頭に置いて見積る必要があります。
30%を超えるような高い表面利回りで売り出されている物件でよく見かけるのは、その地域で供給過剰になった単身向けアパートで、全室を埋めることが不可能ではないにしても非常に困難なので要注意です。
⇒物件見極めポイント1:現実的な入居率を想定する
入居率を想定通り、または想定以上で運営するためには、物件の競争力に見合った賃料設定と、然るべき入居募集努力が必要になります。物件の競争力は、主なスペック(1)部屋の広さ・ルームタイプ、(2)立地、(3)築年、(4)外観、(5)内装・設備に対する需要で決まります。
部屋の広さは分かりやすいですし、立地については、駅や利便施設からの距離で、ご自身が住むとしたら、という感覚で考えればそれほど外れないでしょう。
築年は、想定家賃と関連する重要ポイントで、特に新築や築浅の物件は、築年数が経つにつれて家賃相場が無視できない割合(ざっくりおよそ5%/年)で下がっていくのを、収益計画に反映しておく必要があります。
新築や築浅当時の入居者がそのままの家賃で何年も住んでいる場合、その家賃は短期的には実現しますが、退去した後に、同じ金額で募集することは困難です。空室について、そのような現実的でない想定家賃で表面利回りを計算しているような悪質なケースもあるので、必ず自分で周辺の類似物件を調べて、家賃相場を確認することが重要です。特に新築物件は全室が空室なので甘めの計算だと大変なことになります。
⇒物件見極めポイント2:周辺の類似物件から想定家賃を計算・確認する
現状が満室であれば、購入直後から想定通りのキャッシュフローが得られますし、しばらくは入居募集せずに済み、物件の競争力も高そうだという安心感があります。そのため、満室の物件は多くの不動産投資家に好まれ、割高になりがちです。しかし、賃料の高い長期の入居者の複数から退去通知が出ていてそれが売却のきっかけになったケースや、すぐに退去する半架空の入居者で埋めた「なんちゃって満室」で販売されているような怖いケースもあるので要注意です。
レントロール(家賃一覧)を確認し、直近の入居者について不自然な点はないか、賃料の高い入居者について退去予定が無いか、確認することが望まれます。
⇒物件見極めポイント3:レントロールに示された家賃が実現可能かをよく確認する
表面利回りを見てはいけない②・・・重要なのは初期リフォームの見積り
物件代金以外の主な初期費用は、(1)不動産仲介手数料、(2)登録免許税、(3)不動産取得税、(4)所有権移転登記手続費用、(5)初期リフォーム費用ですが、(1)~(4)の合計を、ここではざっくり物件価格のおおよそ7%としておきましょう。
問題なのは、(5)の初期リフォーム費用です。
物件が満室であれば不要で、これも満室が好まれる大きな理由です。しかし、満室の物件を買ったとしても、退去が出れば、原状回復のリフォームが必要になります。
逆に、ある程度の手間を掛けて初期リフォームを行う前提で物件を探すと、面倒を嫌がってオーナーが手放そうとしている割安な物件を買うことができ、想定通りまたはそれよりも抑えてリフォームを実施できれば、高利回りを実現することができます。
30%を超えるような、高い表面利回りのもうひとつの典型例が、そのような大きなリフォームを行わないと賃貸募集ができないような状態で売りに出されているケースで、おおよその必要額をあらかじめ引いて価格を提示しているから、高利回りに見えるわけです。
しかし、マイソク(販売図面)にそのような大きな問題が書いておらず、現地で物件を確認しないと分からないケースも少なくないので要注意です。
ところで、先の節で、物件の競争力として、外観と内装・設備を挙げておいて、敢えて触れませんでしたが、これらに対して、どの程度の初期リフォームを想定するか、は物件を選ぶ際の重要な検討ポイントになります。
大きな問題は手当する必要があることは言うまでもありませんが、内装や細かな設備をブラッシュアップすることで、数年で費用が回収できるような賃料アップが見込める場合も少なくありません。逆に言えば、時代遅れになって不人気な設備については、費用対効果を踏まえて更新を検討する必要があります。
不動産投資に取り組む上で、リフォームは避けて通れないのです。
⇒物件見極めポイント4:初期リフォーム費用を見積って物件を検討する
リフォームについては、別途詳しくまとめていますので、そちらのページを参照してください。
リンク:リフォーム
不動産に定価は無い・・・売主の事情を把握して買付を入れよう
不動産取引ではこれを、指値する、と言います。販売価格はあくまで売主の希望販売価格であり、指値が買主の希望購入価格で、その間で交渉されることになります。
不動産の価格指標はいろいろとありますが、二つとして同じ不動産は無く、それぞれの不動産と、その売主が抱える事情も様々です。なるべく高値で売りたい売主ばかりではなく、金額よりも別の要素が重要、という売主も少なくありません。相続や離婚などで早急な現金化が必要な売主がいたり、思い入れのある実家で、どのような人がその後どのように使ってくれるのかを重視する売主もいます。
しかし、明らかに安値の物件は、価格交渉どころか、いかに早く買付(買付申込書)を出すか、というスピード勝負になり、場合によっては、買い上がり(販売価格よりも高い価格で買い付けを入れること)する投資家も出ます。
ですが、不動産投資の初心者の陥りがちな罠として、自身の見つけた物件がお宝に思えて、買えなかったらどうしよう、と焦る「買いたい病」があります。そのような買い方では、冷静な分析ができず、ダメ物件を掴んでしまう可能性が高いのは言うまでもありません。ちなみに、物件そのものにはダメも罪もありません。同じ物件が、安値で買えばお宝物件、高値で買えばダメ物件になるだけなのです。基本的には、じっくりと構えて相性のあう物件を探し、縁があれば結ばれる、くらいの意識でいることを心掛けていただきたいと思います。(ちょっとお見合いと似ていますね)
不動産投資の純利益を計算しよう・・・修繕費の発生をグリップする
他の事業と同様、ストック利益のための不動産投資、すなわち不動産賃貸事業の利益も、収益-費用=利益で計算されます。
不動産賃貸事業の主要なランニングコストは、(1)火災保険料、(2)固定資産税、(3)修繕費、(4)(返済・)支払利息です。
(1)と(2)は、これもここではざっくりおよそ賃料1カ月分/年としましょう。
発生金額が予想できないのが(3)の修繕費です。収益計算としては、これもざっくり賃料1カ月分/年とおいていいのですが、実際に発生する額は、これよりも少ない年がほとんどです。しかし、その余分は、外壁塗装などの大きな修繕のために、積み立てておかなければならない、と考えてください。
ここで、初期リフォームと修繕費の発生は、ある程度トレードオフの関係にあることにお気づきでしょう。購入時点で原状回復リフォームをした空室は、その後しばらく手当が不要になるでしょうし、放置した問題は、いずれ修繕が必要になる可能性が高いです。
どのような事業でも、利益を確保するためには、合理的に経費を抑えることが重要です。不動産投資において、修繕費の発生をコントロールするためには、リフォームに関わるある程度の知識と共に、物件管理をどのように行うかがポイントになります。
管理については、これも不動産投資において非常に重要な入居募集と共に、別途まとめているので、こちらのリンクをご参照ください。
リンク:物件管理
借入条件と減価償却の重要性・・・不動産投資の利益と手残りの違い
多くの不動産投資手法では、金融機関から融資を受けて物件を購入しますが、その借入条件の主なものが、(1)融資比率(1-頭金比率)、(2)利率、(3)返済期間、です。
通常は、物件価格の1~3割の頭金が求められ、金融機関の融資は残りの7~9割というような条件が提示されますが、その他の初期費用(税金等ざっくり物件価格の7%+初期リフォーム費用)にも資金が必要となります。
フルローンであれば、物件価格の100%の融資を受けることで、オーナーの手出しは、その他の初期費用のみとなります。
オーバーローンといって、初期リフォーム費用などをカバーするために、物件価格以上の融資を受けることができる場合もあります。
どのような借入条件が提示されるかは、(1)個人の属性(法人であれば信用)、(2)物件の立地と担保価値、(3)その時の金融情勢、(4)さらに金融機関の方針・商品・担当者などによります。
融資比率が高ければ、レバレッジが効いて投入する自己資金に対する利益率はより高いものになり、基本的には望ましいのですが、借入への依存度が高まり、返済比率(金融機関への支払い/賃料収入)が上がります。この返済比率は、50%を超えると危ない(ストレス耐性が低くなりすぎる)と言われており、つまり賃料の半分近くが、金融機関への支払いで消えていくのが、不動産投資の普通だと言うことでもあります。
ざっくり、金融機関への支払いで半分(6カ月)、火災保険料・固定資産税・修繕費で2カ月とすると、手元に残るのは4カ月、という計算になりますが、レバレッジが効いていればいるほど、利益と手残り(実際にオーナーの手元に残るキャッシュ)がしっかり残るかどうかを厳密に計算して取り組む必要があります。
少々会計的な話でややこしくなりますが、金融機関への支払いのうち、支払利息は経費になり利益計算に影響する一方で、元本の返済は費用にならず、見かけ上は利益が残っているように見えても、実際にはキャッシュが出ていく、という方向に働きます。利益が残る分、個人にせよ法人にせよ、所得税も相応に増えることになります。
一方で、減価償却費は、会計上・税務上は費用になりますが、手元にはキャッシュが残る、オーナーにとって非常にありがたい存在です。さらにややこしくなりますが、重要ですので少し説明すると、土地は(永久に使えるので)減価償却されず、建物および初期リフォーム・大規模修繕などの資産化された費用が対象で、計上額を減価償却期間に亘って均等に費用にしていきます。
減価償却期間は、法定耐用年数またはそれより長い期間で設定できますが、短く設定することはできず、固定資産の種類ごとにいったん設定したら然るべき事情なく変更することはできません。
建物(住宅用)の法定耐用年数は、RC造で47年、鉄骨造で19~34年、木造で22年から、既に経過した年数の20%を、残存期間に足して端数を切り捨てた期間となります。
また、修繕費用も、マンション等で大規模修繕を想定して、修繕積立金を計上する場合には、計上時には費用となるけれどもキャッシュアウトせず、実際に修繕が発生した際には、キャッシュアウトするけれども積立金を取り崩すので費用発生しない、ということになります。
利益がマイナスになってしまうと、特に法人では金融機関に対して大きく信用を損なうことになり、その後の事業展開に支障をきたします。
もっと怖いのは手残りがマイナスになることで、金融機関・保険会社・管理会社そして税金を払うために、毎月の本業の給料をつぎ込み続ける(または資産を取り崩していく)、という苦しい事態に陥ります。しばらく耐えても、想定賃料・入居率は年々下がり、元本返済比率もあがって、早晩手放さざるを得なくなることがほとんどです。
そうなることが分かっている物件でも、多くの不動産業者は喜んで売ってくれます。その物件の購入時に仲介手数料が入るばかりでなく、しばらくしたら、こんどは売却時の仲介手数料も期待できるからです。
利益と手残りを、自己責任でしっかり現実的な数字で計算することの重要性を分かっていただけたでしょうか。
もっとも大きなキャッシュアウトである、金融機関への支払いを抑えるために、利率を低く、返済期間を長く借り入れることができれば何よりですが、それ以上に重要なのが、残存法定耐用年数を超えた期間のローンを組んでもらえるか金融機関かどうかです。
返済は長期間、減価償却は短期間であれば、キャッシュが残りやすいのは当然ですが、減価償却期間が終わったら手残りがマイナスになるような投資は健全ではありません。多少厳しめな(ストレスを掛けた=収入や費用を辛めに予測した)見積りでも、キャッシュフローをプラスに維持できることが、合格物件のひとつの基準です。
そのように、保持しつづけてもきちんと不労所得を産みつづけ、売りたくなったら速やかに売ることにできるような流動性のある(買いたい人/買える人が多く現れる)物件を、持って良し売って良し、などと言います。
最もレバレッジの効く不動産投資・・・RC一棟物は地雷原
さて、ここまでの基礎知識を踏まえて、具体的な不動産投資手法について検討していきます。
不動産投資の花形といえば、RC(鉄筋コンクリート)造の、いわゆるマンション一棟物でしょう。比較的短期間に数棟のマンションを購入し、数百戸のオーナーとなった、いわゆるメガ大家がメディアでも取り上げられています。
しかし、だれもが住んだり保有したりしたくなるような、東京23区のRCであれば、その表面利回りは5%前後です。これを聞いただけでも、ヤバい!と思っていただけるでしょうか。
5%はあくまで表面ですので、空室率、その他の初期費用、ランニングコストをきちんと押さえないと簡単に手残りがマイナスになってしまい、多少なりとも余裕をもって取り組もうと思えば、かなりの好条件で融資を受けなければならないのです。
従って、RC一棟物に取り組めるのは、そのような好条件で、かつ億単位の融資を引き出せるような、属性の高い、大企業勤めのサラリーマンや公務員、資格系職業でしっかりとした実績のある方に限られます。
しかし、実際にRC一棟物に取り組むためには、前節まで説明してきたような不動産投資のリスクを理解していなければ危なくて仕方がありません。
本業で大いに活躍しており、忙しいに違いない人のみが取り組める不動産投資法こそ、最もしっかりとした勉強が必要というのは、なんとも皮肉なことではあります。
RC一棟物は、エレベータ・給水設備・電動駐車場など、ランニングコストのかかる設備が多く、さらに、外壁塗装・屋上防水・エレベータ交換といった、大規模修繕の費用が莫大になります。そのような費用の掛かる大規模修繕をやらずに後送りにすることで、なんとか手残りをプラスに保っているケースが少なくありません。市場に出ているRC一棟物は、そのような出費から逃げられなくなる前に売り抜けようという、地雷物件で溢れている中に、ときおり何らかの事情で安値で出ているお宝物件が混じっているという、ババがいっぱい混じっているババ抜きのような世界です。
どれだけ属性が高い方であっても、初めての不動産投資はアパートか戸建からスタートすることを強くお勧めしておきます。
その一方で、言うまでもないことですが、全ての要素をきちんとコントロールできれば、大きな利益率・利益額を出し、一気に規模を拡大することができるのがRC一棟物です。属性も経験も十分なベテラン不動産投資家であれば、取り組んでみたいところです。不動産投資の王道・・・アパート一棟
属性からの融資条件と、本業の合間に作る時間でやれるという点から、多くの方が取り組み可能なのが、アパート一棟物でしょう。
レバレッジが効くこととその怖さは、RC一棟物に準じます。一方で、規模拡大の速度は、戸建てに比べるとはるかに速く、アパート一棟を仕上げる手間は、ざっくり戸建て一軒の2~3倍でしょうか。
アパートの最大のリスクは、需給状況の緩みに最も弱い、という点です。家賃や他の条件が同じだとして、マンションとアパートの戸建てのどれに住みたいですか、と問われれば、誰もがマンションか戸建てを選ぶでしょう。マンションか戸建てであれば、いざとなればアパートと同じレベルの家賃に下げることで、空室を埋めることができます。
しかしアパートの、特に単身向けは、床面積あたりの部屋数が多く取れ、計画時点での(あくまで満室想定の)表面利回りが高くなるために供給過剰になりがちで、周辺のアパートが値下げに出ると追従せざるをえず、需給が壊れてしまった地域では、家賃をいくら下げても借り手がつかない、などということも起こります。
この点、ファミリー向けの間取りであれば、そのリスクはほとんどないくらいに軽減されます。最悪、単身向けと同じ家賃に下げればなんとかなるからです。
ちなみに、単身向けの共同住宅の平均入居期間は2年、ファミリー向けは4年、戸建ては10年と言われており、退去があると、少なくとも数か月の空室期間が出てしまうことも、単身向け物件の表面利回りが、実質とより乖離する理由のひとつです。
また、多少の地域差がありますが、おおよそどこでも、日本人の約半数は賃貸物件に住んでいます。
高齢者・生活保護受給者・外国人などの住宅弱者の受け皿となるのも、主として単身向けのアパートで、そのような廉価な賃貸住宅を必要とする多くの人に住む場所を提供するという意味でも、アパートは不動産投資の王道だと言えます。
もうひとつ、アパートのリスクは、騒音・異臭などの住人間のトラブルが起きやすいことです。甚だしい迷惑入居者が出て、周囲の部屋がみな退去してしまう、というケースも有りえます。
あらゆる点で堅実な不動産投資・・・戸建て
アパートは投資用になるべく費用を抑えて建てられるのに対して、ほとんど戸建ては、住宅ローンを組めるきちんとした勤め人が、一生に一度の買い物として、思い入れを持って建てた物で、アパートよりもずっと質の良い設備が導入されています。
賃貸でも戸建てであれば、楽器を演奏し、気兼ねなく音楽や映画を愉しみ、また(オーナーの同意があれば)犬や猫を飼うことができるので、賃貸でも戸建てに住みたいファミリー層は少なくありません。
空き家率は現状約15%、近い将来2割に達すると言われますが、綺麗にリフォームされて賃貸市場に出てくる戸建ては、ごく限られています。
従って、需給が緩むことがほとんど無く、立地の良し悪しをあまり気にせずに物件を検討することができます。なお、また、後述の目標利回りをめざしやすい立地であれば、車社会が前提で、利便施設との距離は(小学校を除き)それほど気にしなくてもよい一方で、駐車スペースが重要で、1台では不足、できれば2台以上を確保したいところです。
また、戸建てには共用部分がないため、清掃・除草・除雪も入居者さんにお任せできるばかりか、設備の不具合など本来オーナーが対応すべき事柄であっても、自分たちの住んでいる家だから、ということで入居者さんが対応してくれてしまうことも少なくありません。
一軒の戸建てからくるクレーム・要望は、平均すると一年に一件あるかないか、という頻度でほとんど管理の手間がかからず、平均入居期間も長いため、戸建てについては、管理会社を起用せずに、自主管理をした方が良いです。
戸建て投資の最大のデメリットは、規模の拡大が遅いことです。
物件のほとんどは、賃貸に出す前に何らかのリフォームが必要で、その費用を見積り、その見積りに抑えて実施するのが、結構な手間になります。
普通に勤務しながら時間を見つけての取り組みであれば、1年に3軒がいい線でしょう。
また、高利回りを狙える地域であれば、その地域で賃貸物件を探している人の絶対数が少なく、その中からアパートよりも少し高くても戸建てに、と思う人が出てくるのを待たなければならないために、入居募集の空室期間が長くなりがちです。(ざっくり3ヶ月が目安です)
戸建て投資は、目標利回りとレバレッジの観点から、大きく2つの手法に分かれます。
現金のみで、レバレッジを想定しないのであれば、物件購入費用と初期リフォーム費用その他の投資額を300~400万でまとめて、5~7万円で賃貸するイメージです。
300万円でまとめるということの意味は、その他の初期費用を40万円として、物件価格が260万円であればリフォームほぼ不要、物件価格が160万円であればリフォーム費用100万円、痛みが激しくゼロ円でひきとるような物件であれば、リフォームに260万円を掛ける想定ということです。
このように戸建て投資では、初期リフォーム費用の比率が高く、表面利回りは数字として意味をなさないので、粗利回りと呼んでいますが、現金のみの投資であれば、想定家賃/投資額が20%以上、運営経費を引いた純利回りで16%が目標です。
なお、戸建ての場合は、初期費用や運営経費に占める税金や火災保険料の比率が、アパートよりも高くなる(利回り計算方法の説明に際して言及した比率は当てはまらない)ので留意してください。
この手法は、属性の全く無い方でも取り組め、返済のプレッシャーもなく、物件に大きな問題が発生しても波及はその一軒に限られるため、心理的にもリスク管理的にも安心であるばかりでなく、純利回り16%というのは、そこそこの出来のアパート一棟の自己資金利回りとあまり変わらなかったりします。
一方、アパート購入の共同担保に入れるなど、レバレッジを想定するのであれば、総投資額700~1000万円で、粗利回り12%を目指します。(立地として、首都圏であれば国道16号線の内、などと言われます)
アパート投資を視野に入れていても、その準備として、共同担保に入れられる戸建てからスタートするのは、決して悪くない選択です。
不動産投資収益シミュレーション①
ここで、典型的なアパート一棟投資の手残りと利益をシミュレーションしてみましょう。
左側のベースシナリオについて少し説明すると、初期リフォーム費用の80万円というのは、おおよそ2~3部屋の原状回復費用に相当します。耐用年数(木造22年)は(ほとんど)切れているとすると、土地と建物の価額(通常、固定資産評価額に応じて案分)の割合はざっくりこのような具合(8:2)になります。
前提条件を少し変更して、まず空室率をベースシナリオの10%から、仮に0%で運営できたと仮定すると、特に手残り・会計利益と自己資本利回りが大きく増加することが分かります。考えてみれば当然ですが、受け取り家賃から、返済・利息支払い、固定資産税、火災保険料、修繕費を支払った残りですから、家賃が増えれば、それがそのまま手残り・利益の増加に直結します。逆に、空室率が20%、30%となると、手残り・利益はどんどん減っていきます。
修繕費についても、想定額の半分で済んだ場合と、倍かかった場合で、利益が大きく動きます。
不動産投資収益シミュレーション②
次に、借入条件を変更してみましょう。利息はより低く、借入期間はより長ければ、手残り・利益は増加します。
興味深いのは、借入利息を2%→1%と半分にするのと、借入期間を30年→35年と5年だけ延ばすのとで、直近年度の業績への効果はほとんど変わらないことです。返済期間35年の方が、直近年度の元本返済が少ないために、会計利益はより少ない一方、手残りはあまり変わらないので、そちらの方が望ましいくらいです。
もちろん、1%で30年のローンが完済した後に、2%で35年のローンは返済が続くので、その5年間の手残り・利益は大きな差がつきますが、そこまで保有し続ける可能性はあまり想定しなくてもいいでしょう。端的には、利率よりも、借入期間の方が重要と言えます。
また、減価償却年数を変更すると、他の数字は一切変わらずに、会計利益だけが大きく変わります。法定耐用年数が切れている住宅用木造建物は、最短では4年ですが、4年では赤字になってしまうために、5年にしてあります。他の収入がある場合には、赤字も節税効果がありますが、そもそも減価償却年数は、固定資産の種類ごとに定めてあとから変更できないために、最初の収益物件の利益をなるべく少なくしようと極端に短くすると、次の物件を購入した際に、全体の会計利益が赤字になってしまう可能性があり、また税務上もリスクが高まるために、多少余裕をもって長めに設定する方が良いです。
その他の投資手法
これらについても、いずれ主なメリットデメリットを記載していきたいと思いますが、ひとまず、不動産投資を始めるのであれば、戸建てかアパートがお勧めであるということを再度強調しておきます。