Service 07

物件管理

管理会社の管理というオーナーの最低限のお仕事

かたや不動産投資と言い、かたや不動産賃貸業と言ったりします。いったい、収益不動産物件を購入するのは、投資なのでしょうか、それとも事業でしょうか。

 人がお金を稼ぐ手段は、3つあります。ひとつは労働、時間を投入してその対価として報酬を得ること、ふたつめは投資、資金を投入してリターンを得ること、そしてみっつめの事業は、資金と時間の両方を投入して、その成果を得ることと定義できます。

 株・債権・通貨など、多くの投資対象は、(投資前に分析するという投資家としてのお仕事はありますが)いったん投資してしまえば、時間を取られることは基本的にありません。

しかし、不動産投資には、物件管理という継続的なお仕事が発生するのです。逆に言えば、不動産賃貸業は、他の多くの事業に比べると、得られる賃料に比べて、日々の運営のために必要となる労力がかなり小さいために、かなり投資に近いけれども、それでも時間もとられるという意味で、事業なのです。

そして、(本当は労働でも事業でもそうですが)なるべく時間を使わずにより多く稼げるように工夫することは重要です。従って、物件管理業務を任せるために、管理会社を起用すること自体は合理的です。

ですが、物件管理にも、知っておかなければならない留意点・リスクポイントが少なからずあります。収益物件のオーナーは、管理会社の業務を管理する、という必要最低限のお仕事だけは、しなければならないとご認識ください

(なお、以下の文中の、青字は知っておきたい不動産物件管理用語、赤字は留意していただきたい物件管理リスクです)

物件管理のお仕事①・・・修繕

 管理会社を起用した場合に、管理会社に支払う管理料は通常、賃料の3~5%ですが、「管理料ずっとゼロ円」と謳っている管理会社もあります。なぜそんなにも幅があるのでしょうか。管理会社の主な収益の源泉は、(管理料よりもむしろ)修繕(や次節以降で説明する賃貸募集や物件入れ替えに係る仲介手数料)だからです。

社内に工務部門を持ち、修繕を相場かそれ以下の金額で実施・請求するような素晴らしい管理会社は稀で、多くの管理会社は、実際の修繕は外注した上で、オーナーへの請求書は、良心的な場合で相場の120%、多ければ200%超にもなっているケースが少なくありません。

施工会社からの直接請求であっても、管理会社のグループ会社であったり、別の形で繋がっているため、金額がリーズナブルかどうかは、常に意識する必要があります。

 管理契約書の中で、一定の金額以上(1~数万円)の修繕は、事前に見積についてオーナーの了解が必要であること、を明記してもらってください。

 そこで、金額が高いな、と思えばオーナーが自ら相見積を取り、小さくない差があればそちらに発注できることも重要です。

 管理契約書に、その会社以外に修繕業務を発注できない、という条項のある管理会社は、オーナーからボル気満々ですから、起用してはいけません。

 また、リフォームのページでも触れましたが、必要のない修繕を、必要ですとオーナーに説明して実施・請求するような悪質なケースもあるので、そのような可能性についても、検討・確認・牽制が必要です。

 特にマンションの場合には、外壁塗装などの大規模修繕に大きな費用が発生します。RC一棟オーナーはもちろん、区分所有のオーナーであっても、または実需でマンションに住まわれている方でも、そのマンションの管理会社が、大きな金額の施工であれば、きちんと相見積りを取っているのか、その金額・入手元は妥当なのか、などを確認することが望まれます。そのために、管理組合の理事・監事などをやってみるのも一案かもしれません。

 

 不動産投資の最終的な利益や手残りをしっかりとプラスにするために、発生金額に大きなブレが生じる修繕費をきちんとコントロールしましょう。

なお、当社では、常に直接の施工会社からの請求書をお客様に共有し、その15%(税別)の手配料のみいただく明朗会計で、オーナーの物件管理をサポートします。施工会社からリベートなどももちろんもらいません。

物件管理のお仕事②・・・入居募集

不動産賃貸事業の運営における、一番の気苦労ポイントが入居募集です。金融機関への返済や、区分所有であれば管理費や修繕積立金、借地物件であれば借地料などの支払いが定期的に発生する一方で、想定している賃料が入らない時の焦燥感といったらありません。

ここでも管理会社の役割が非常に重要です。放っておいても、空室がでるたびに熱心に賃貸募集して埋めてくれる管理会社(の担当者)はありがたいものです。ですが、修繕の請求が誠実で、入居募集も熱心などという完璧な管理会社は、魅力的で三高(古!)の未婚男性を見つけるよりも困難かもしれません。

管理会社が、速やかにかつ積極的に募集してくれるようにリマインドすることがオーナーの最低限のお仕事ですが、管理会社が募集してもなかなか決まらない場合には、オーナー自ら入居募集の努力を行うことも必要になってきます。

 管理契約書に、その会社以外に入居募集を依頼できない、という条項のある管理会社は、起用してはいけません。管理会社の、修繕に次ぐ重要な収入源が、賃貸募集時の仲介手数料や更新手数料であり、それを囲い込みたいという意図ですが、本当に客付け力のある管理会社であれば、そもそも囲い込む必要もないはずです。

 

 オーナー自らができる賃貸募集努力は大きく3つです。

1つ目は、賃貸募集を得意とする不動産仲介会社に依頼すること。駅前に店舗を構えている不動産業者は、賃貸仲介の比率が高いので、大手のチェーン店と地場の会社のそれぞれ1~2社づつ頼んでみるのが良いでしょう。その際、契約業務は管理会社が行う(仲介手数料は管理会社がとる)ので、募集を依頼する会社には、別途AD広告料を出します(通常は賃料1カ月ですが、地域によっては数か月になることも)。

 2つ目は、オーナー自らが直接賃貸募集できる媒体(具体的には、ECHOS、ウチコミ、ジモティ)を活用すること。

 3つ目は、物件に簡単なステージングを施したり、ウェルカムグッズ、ご近所便利マップ、芳香剤などを置いて、内見者の印象アップを図ることです。

加えて、そもそも募集の対象にしている入居者をなるべく制限しない、という配慮も望まれます。高齢者、生活保護受給者、外国人は、といったいわゆる住宅弱者は、受け入れる賃貸住宅が少ないために、積極的に受け入れる物件では入居率アップに貢献します。他にもペット可、2人入居可、事務所使用可、などいろいろあり、それぞれ関連するリスクを回避するためのノウハウがありますが、細かくなるのでここでは割愛します。

 これらの努力をしてもなかなか入居が決まらない場合には、物件の競争力と賃料設定とのバランスについて、再検討した方がいいかもしれません。

実は作業が不要な普通借家契約の更新

賃貸契約が、定期借家契約であれば契約期間が終わる際に、退去してもらうのでなければ、契約の再取り交わしを管理会社が行う必要がありますが、普通借家契約の場合には、法定で更新されるので、実は何の作業も要らないのです。(それだと恰好がつかないので、更新確認書といった書面を発行して、回収するという作業を管理会社で行ったりします)

 入居者さんからの更新料は、地域によってある場合とない場合がありますが、ある場合には2年に1度家賃1カ月分、その1カ月を半月分づつオーナーと管理会社とで分けあう形が標準的です。しかし、普通借家の更新に際して、入居者さんからの更新料1カ月の全額をとった上で、別途1カ月分の更新手数料をオーナーに請求するような、ガメツイ管理会社もあるので注意しましょう。

 個人的には、更新料は無しに設定することをお勧めします。(普通借家であれば管理会社への更新手数料も無しです)。なぜならば、更新の時期が近づくと、「どのみちまとまったお金が出ていくならば、これを機会に引っ越そうかな」、と考える入居者さんが少なくないからです。

物件の所有と管理に関する心構え

所有した収益不動産をいつ売るべきか、どのような相手に売るか、予め想定しておくことを、出口戦略といいます。主な検討ポイントを挙げると、(1)減価償却が終わると、それ以降の手残りは大きく減ること、(2)法定耐用年数の残りに応じて、多くの金融機関の融資の年数が短くなり、超過すると融資がつきにくくなるため、購入できる不動産投資家が減ること、(3)個人で購入している場合には、5年度所有せずに売却すると、短期譲渡所得で、税率がおおよそ長期譲渡所得の倍くらいになること、といったところです。

 また潜在的な買い手として、投資家しか買わない物件なのか、実需向けにも売れるのか、または更地にするのか、それとも自分で建て替えか、といった様々な想定が可能です。

出口戦略は、収益物件を購入する時点で、ある程度考えておかなければなりません。

 

と言っておいて、矛盾するようですが、最も基本的な想定は、所有し続けることで、その重要なメリットは、リスクもコストも発生しないことです。

法定耐用年数の超過した物件を購入し、4年間の減価償却の税務メリットを享受した後は、同じような金額の物件に買い替える、などというのは、計算上は大きな手残りを産みますが(そして仲介手数料が欲しい不動産会社が勧めるかもしれませんが)、実際には、そう順調にいくとは限りません。買い替えた先の物件が地雷物件で、手残りが赤字になり、想定していた金額で売却できずローンが返済できないので撤退もできない、という最悪の事態に陥るリスクもあります。

そうでなくとも、手数料や税金などの目に見える経費だけでなく、すでに所有している物件の買い手を見つけ、さらに新しい物件を探して購入し、必要な初期リフォームを行い賃貸募集して、前の物件と同じレベルの入居率まで仕上げる、という作業に係る時間コストも相当なものになります。

 さらに言えば、売り出した値段ですぐに売れると、「ありゃ、安く売りすぎたかな」、売れないと、「値下げしないとダメなのかな」などと、気を揉んでしまうのが人間で、心理コストも発生する、と言えます。

 そもそもですが、ある程度以上の頻度で物件の入れ替えをすると、不動産賃貸業ではなくて、不動産売買業としての要素がより強く、つまり投資よりも事業~労働の要素が強くなってしまいます。不動産投資が素晴らしいのは、安定した不労所得を産んでくれることです。それをお仕事にしてしまっては本末転倒です。

 

 もう一点、いずれかのタイミングで売却することを想定すると、初期リフォームや維持のための修繕費はなるべくかけずにおいて、売り抜けよう、とするのが合理的になります。

そのあたりをケチると、なんとなく入居者や入居希望の内見者にも伝わって入居率が低迷するということもあるでしょうし、その物件の持つ雰囲気が荒んでいくように思います。

 ぜひ所有している、またはこれから所有する建物・土地を大切にしてあげてください。そうすれば、喜んだ不動産がきっとオーナーの貴方に恩返しをしてくれることでしょう。
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